こんにちは。子育て世代の行政書士 宮地です。
今回は,将来にわたって養育費の支払いが“継続”していくための2つのポイントについて書いていきます。
養育費は,日々成長するお子さんのための費用です。
当たり前かもしれませんが,お子さんの成長は待ったなしです。
離婚の際,お子さんの養育費に関わることを,将来にわたってはっきりさせておきたい気持ちは,親として誰もがもつ感情だと思います。
これまで数々の公正証書や調停調書をみてきた経験から,別居や離婚後も養育費の支払いが“継続”され,お子さんを安心して育てられる2つのポイントは
別居や離婚で双方の環境が変わる前に(双方の生活状況や収入が把握できる間に)話し合うこと
話し合いの内容を公正証書などの「書面」に残すこと
にあります。
離婚した場合もお子さんと親としての関係が途切れるわけではありませんから,離婚後であっても養育費を請求することは可能です。
ただ,別居後や離婚した後は,お互いの生活環境も大きく変化します。
お互いが遠方に引っ越すケースもあるでしょうし,ある日突然,連絡が取れなくなるようなケースも考えられます。
離婚後は双方が疎遠になるケースがほとんどですから,離婚する前に養育費やその他の金銭面について,きちんと話し合いをしておく必要があります。
では,まず話し合う上での個々の具体的なポイントから説明していきます。
養育費について話し合う上で,支払いを受ける側としては,
を提示できるよう,前もって考えておかなければなりません。
もちろん養育費を支払う,支払わないについても重要ですが,いざ支払内容を具体化する場面で,目安となる金額を準備しておかなければ,話し合いもうまく進みません。
そのため支払いを受ける側でも,相手方を納得させられるような養育費の支払計画を提示できるよう,準備しておくことが大切です。
前回の記事では,養育費を決める際の相場や参考となる「算定表」に関してお話ししました。
ご夫婦の話し合いによる離婚(協議離婚)の場合,必ずしもこの算定表を利用しなければならないわけではありません。
ただ,これまでの統計や社会情勢に基づいた目安であるため,提示する参考にはなります。
現実には,家計の問題にもなりますから,お子さんの成長ステージに応じて必要な費用を整理して,今後も“継続”できる金額やサイクルで考えていくことになります。
具体的には,
お子さんの人数
お子さんの年齢(就学や就労状況も含む)
に合わせて決めていくことになりますが,日頃から家計簿などを付けていると,お子さんに関し,月々どれくらいの費用がかかっているのかを把握しやすいと思います。
それぞれの今後の生活設計にも合うよう,お互いが給与明細等を改めて確認し,お子さんの成長ステージにしたがって金額を見積もっていきます。
支払いを受ける側では,具体的に
長男〇〇の養育費として,令和〇年〇月から令和□年□月まで1か月〇万円ずつ
といったように検討しておきましょう。
お子さんが複数いらっしゃれば,それぞれのお子さんについて定めていくことになります。
前もって考えておけば,いざ話し合いの場面になってもきちんと提示することが可能です。
支払いを行う側にとっても,明確に提示してもらうことで,継続して支払っていくための収入と家計の見通しを立てることができます。
繰り返しますが,お互いに収入や生活状況を把握できる別居や離婚前に,具体的な金額やサイクルを提示し,話し合いを済ませておきましょう。
これに関しては,支払額を決める場面でも,逆に支払いを決めたその後についても,よく挙がる問題です。
結論から申しますと,児童手当や児童扶養手当は,養育費の算出のために考慮しなくてよいものです。
これらはそもそも子どものための社会保障給付ですから,理論上は,支払いを受ける側の収入に含む必要はありません。
支払いを受ける側の年収に上乗せして考えなくて大丈夫です。
余談になりますが,児童扶養手当については,受給者や扶養義務者の年収に基づいて金額を算出しているもので,児童扶養手当の受給に関しては,年度ごとに現況届の提出が必要です。
この際に,養育費に関する申告書等の提出が必要で,支払を受けている養育費の額は支給額に加味されています。
ですので,構造上は養育費の額を受けて児童扶養手当の支給額が決まる順番になっているため,児童扶養手当をもらっているから養育費を減額するというのは,論理的におかしな話になってしまいます。
養育費について決めていく上では,支払いの“継続性”を念頭に置くことが重要です。
話し合いで解決できる間に,支払希望額と支払可能額とをきちんとすり合わせておくことが,養育費の支払いが“継続する”ことにつながります。
現実には,感情面での対立や離婚に至る様々な事情から,無理な金額で実現が難しい養育費計画になるケースも見受けられます。
約束した当初はよいかもしれませんが,無理な計画はやはりどこかで破綻します。
離婚後にいざ話し合いをしようと思っても,離婚後にわざわざ離婚した相手と顔を合わせたい方は,ほとんどいないと思います。
お互いの連絡先が知らぬ間に変わっていることだって,十分あり得ます。
双方の年収や生活設計などが把握し合えるうちに十分話し合いを行い,お子さんのためにも持続可能な計画(約束)とすることが大切です。
もちろん支払いを受ける側が金額について譲歩しすぎることはありませんし,本来「養育費」の支払いはお子さんのためです。
ただ,長期に争うことで養育費の支払いが遅れてしまう,結局は裁判所の手続きで結論が出たとしても,その時点では生活環境が変わり,強制執行も難しいということもあり得ます。
ですので,話し合いが可能なうちに,お互いの希望する額を調整しておくことが支払いの維持にも有効なわけです。
そして,その内容を公正証書として書面化しておくことで,将来支払いがなされなくなるリスクやイレギュラーな状態にも対処が可能です。
離婚や別居後も養育費の支払いがきちんと継続され,金銭的にも安心してお子さんを育てていけるよう,公正証書(執行証書)といった「書面」の作成をおすすめします。
話し合いの末,約束した内容を口約束のままにしないことが重要です。
協議離婚の場合,お互いが極めて対立しているケースは少ないですし,逆に言えば,早期に話し合って,書面に残しておくことが大切です。
書面化しておくことで,離婚後も養育費の支払いが継続的に維持されることにもつながります。
離婚後は双方とも環境が変わるため,口約束では将来にわたって約束が維持されるのか,どうしても不安な部分があります。
双方が公証役場で作成してもらう公正証書(強制執行が可能な執行証書)については,支払いが滞った場合に強制執行の申立てをすることも可能な書面であるため,支払う側にとっても月々の支払いの重みが変わってきます。
もちろん口約束だけでも,養育費の支払いが続いているケースはゼロではないでしょう。
ただ,離婚後はお互いの生活が一変しますから,離婚時にはなるべく公正証書などの「書面」に残し,将来支払いがなされなくなるリスクやイレギュラーな事態に備えておくことが堅実です。
弊所は,公正証書を作成するための原案作成についてもサポートいたします。
仕事に育児や家事,思ったようにゆっくり考える時間は取れません。
そこを補えるよう,思いついた不安やお悩みからお話しいただければ,弊所にて整理し,「カタチ」にいたします。
ご来所いただくことなく,育児や家事の合間のご都合に合わせて,オンラインでもお気軽にご相談いただけます。
今回は,養育費はとにかく“継続”して支払われることが大切で,そのためには離婚前にしっかりと話し合っておく必要がある,話し合いの内容は書面にするのが重要であることについて触れました。
実際に離婚を考えるにあたっては,ご自身の将来だけでなく,お子さんの養育費の面でお悩みの方も多くいらっしゃいます。
少なくともお子さんに関わる部分は,なるべくクリアにしておきたいお気持ちはよくわかります。
後々の困った!を防ぐためにも,養育費を含めた離婚条件を書面化するお手伝いを承っています。
家計の状況などから,提示する養育費の金額やサイクルを一緒に考えることも可能です。
原案を考える際は,養育費だけではなく,離婚に伴う財産分与や年金分割など,他にも考える要素は沢山あります。
これまでに数多くの公正証書や調停調書などをみてきた経験から,お客様のご要望をしっかりと伺い,それぞれのご家族にあった協議内容を設計いたします。
ささいなことでもお気軽にご相談ください。
次回は,お客さまからの問合せも多く,離婚する際の心理的負担の一つでもある,離婚後のご自身やお子さんの苗字について書いていきたいと思います。
最後までご覧いただき,ありがとうございました。