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養育費を払わない選択肢はあるのか2020.07.27

1 養育費を払わない選択肢は,「ほぼ」ないです。
1-1 養育費の支払いは「法律上」の義務
1-2 養育費について話し合いがうまくいかない場合
1-3 2020年4月1日から改正民事執行法が施行
2 養育費の取り決めは,お子さんのためであり,支払うご自身のため
2-1 養育費の支払いを明確に決めておくことは「支払う側」にもメリット?
2-2 支払わない選択肢が認められる「例外」もあるのか
3 最後に


こんにちは。子育て世代の行政書士 宮地です。

今回のテーマは,養育費です。

‘’養育費の支払い”については,お子さんのいらっしゃるご夫婦が離婚される際,必ず直面するともいえるテーマです。

  

養育費を払う,払わないについて,感情論ではなく制度に関してご紹介していきたいと思います。

1 養育費を払わない選択肢は,「ほぼ」ないです。

1-1 養育費の支払いは「法律上」の義務

養育費については,民法上「父母が離婚するときは,子の監護に要する費 用の分担について父母の協議で定めるものとすること,子の利益を最も優先して考慮しなければならない」旨規定されています(民法766条Ⅰ)。

  

未成熟子に対する養育費の支払義務(扶養義務)は、親と同水準の生活を 保障するという強い義務(生活保持義務)であるとされており,親権者ではなくても,また,同居していない親であっても分担「義務」があります。

 

そもそも「払った方がよい」ものではなく,法律上の「義務」なのです。

1-2 養育費について話し合いがうまくいかない場合

養育費について,話し合いで折り合いがつくケースも多くありますが,離婚そのものを含め,折り合いがつかなければ裁判所の調停手続きを利用することが考えられます。

     

調停期日は九分九厘,平日の日中に指定されますから,お仕事をされている方は,基本的に調停での結論が出るまでの間,ご本人又は代理人(弁護士)が定期的に裁判所に出向いて話を進めることになります。

しばらくしても不調に終わった場合,審判に移行する等しますが,手続上は最終的には裁判官の判断という結論にもなってきます。

  

養育費の支払いはそもそも義務ですから,父母それぞれの経済力や家庭環境などを加味して金額が決まることになります。

調停や審判で決まった養育費の支払条項は強制執行のための債務名義となり得ますし,その取り決めをもとに財産(給与債権,預貯金債権など)の差押えも制度上可能です。

  

債務名義というのは,民事執行法22条に規定されていて,強制執行を長い列車に例えるとすると,債務名義は乗車切符のようなイメージです。

担保権実行の場合は別ですが,公正証書などの「債務名義」がないとそもそも差押えの手続きに乗ることができません。

口約束だけではなく,公正証書などの法定文書をつくっておくことが必要なのです。

    

1-3 2020年4月1日から改正民事執行法が施行

将来的に養育費について支払いが滞った場合,債務名義に基づいた強制執行をするかしないかは,支払いを受ける側の自由です。

もし,強制執行の申立てをするとなると,債務者(支払う側)の財産のうち何を対象とするのか,債権者(支払いを受ける側)が調査する必要があります。

  

対象が給与であれば相手方の勤務先がどこか,預金等であってもある程度特定する必要がありますが,離婚後に転職していたり,取引口座が変わっていたりするということもあり得ます。

  

強制執行は対象にヒットしないと,支払う義務はあっても,現実に回収ができない状態となるわけです。

 

この点に関して,2020年(令和2年)4月1日施行の改正民事執行法により,養育費や婚姻費用の支払いについて債務名義(調停調書,執行証書と呼ばれる公正証書など)があれば,強制執行をしても空振りとなった場合などに,裁判所において債務者の財産を開示するための手続きも定められています(民事執行法197条Ⅰ)。

  

公正証書に関しては,こちらをご覧ください。

さらに,一定の要件の下,相手方の勤務先や預貯金に関して,第三者から情報を取得するための手続きを裁判所に申し立てる制度もあります(民事執行法205条~207条)。

  

そういった意味で,養育費の支払義務についてはもちろん,支払いの履行というステージにおいても支払いは「踏み倒せない」構造となっています。

2 養育費の取り決めは,お子さんのためであり,支払うご自身のため

2-1 養育費の支払いを明確に決めておくことは「支払う側」にもメリット?

そもそも大切なお子さんのために,裁判所で長期に渡り折り合いがつかなかったり,手続きの中で半ば強制的に金額が決まることになるのは,結果としてお互いに不本意な部分もあるかと思います。

  

双方の収入などの状況から,支払う側も「払わない選択肢はない」ものと割り切ることで,支払いを受ける側との条件を調整し,ご自身の支払可能額を提示した上で‘’任意に”解決できることが理想だと考えられます。

それは支払いを受ける側にとっても同じです。

   

養育費の必要額はお子さんの年齢,就学の有無や健康状態などにより変動します。

例えば,20歳まで毎月一定額を支払うとすると,持続可能な金額はどこなのか,そういった観点も含め,プライベートで調整を図り,書面に残すことも可能です。

  

ご都合のよい時間に打合せができますし,離婚される場合,その多くが協議離婚ですから,合意できる状況であれば,養育費を含めて,離婚前にきちんと話し合っておくことが大切です。

その上で,離婚協議書に残すなり,公正証書を作成する等して,お子さんに対する金銭的ケアを明確にしておくことは重要だと思います。

 

支払う側からしても,「もっと支払ってもらえるはずだった」などと,後から言った言わないの話になるのは不本意だと思いますので,口約束ではなく“書面”にするのは,支払いを受ける側のためだけではなく,お互いのためでもあります。

 

協議離婚(話し合いによる離婚)が可能なケースについては,行政書士も離婚協議書や公正証書の案文作成までサポートが可能です。

2-2 支払わない選択肢が認められる「例外」もあるのか

最初に養育費を支払わない選択肢が「ほぼ」ないとしたのは,お互い納得した上でそもそも取り決めをしなかった場合,また,一度取り決めた場合も,養育費の金額等について,その後の事情により「調整する」方法もあるからです。

 

具体的には,一度決まった養育費であっても,減額調停であったり,万一差押えを受けた際の差押範囲変更(減縮)の申立てという制度があります。

 

お子さんがまだ小さい時に離婚された場合,お子さんが20歳に達するまでを基準にしたとしても,養育費の支払期間が相当長くなることもあります。

長期の間に,再婚して家庭環境が変わったり,勤めている会社でリストラに遭う等,養育費の取り決めをした際とは状況が大きく変わることも当然あり得ます。

  

もちろん離婚して以降,環境が変わった,再婚して扶養家族が増えたこと等を理由に,必ず減額が認められるものではありません。

裁判所での手続きにおいて,減縮申立てをした側の言い分がすべて認められるような制度ではありません。

 

ただ,例えば勤務先からの収入が途絶えた場合などは,養育費の支払原資も縮小するわけで,支払う側ご自身の生活が成り立たないのでは元も子もありません。客観的資料に基づいて,支払う側の生活を考慮すべき事情があるか等については,ケースバイケースかと思います。

3 最後に

離婚時の養育費については,配偶者双方が話し合える状況にあるのであれば,お互いが一定程度歩み寄り,金額はきちんと決めておくのが肝要です。

 

何よりお子さんのため,言った言わないの話にならないよう,また,別れる「お互い」のためにも,なるべく書面に残して明確にしていきたいところですね。

 

最後までご覧いただき,ありがとうございました。

 

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