こんにちは。子育て世代の行政書士 宮地です。
今回のテーマは,養育費の計算方法についてです。
いわゆる“相場”に関しては,裁判所で使用されている「算定表」が目安となります。
算定表はあくまで目安ですので,ご家族構成や双方の収入に合わせ,色々な事情を考慮して決めていくことになります。
養育費については,本来は子を監護する親の事情に合わせて,夫婦の間で自由に金額,支払時期やその方法を決めることができます。
折り合いがつかない場合は,家庭裁判所での手続きによることなりますが,その金額については、いわゆる目安のようなものが提示されています。
ご夫婦双方の収入を縦軸・横軸でグラフ化し,その各金額をたどって交差するポイントがいくらの養育費になるかといった「算定表」が,裁判所ホームページにも掲載されています。
いわゆる「養育費算定表」です。
裁判所ホームページ 公表資料 養育費・婚姻費用算定表(令和元年版)
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html
婚姻費用の場合も同様ですが,収入統計や社会の実態を反映させた形で作られたといわれています。
最近になって,算定表のもととなる統計資料が更新されるなどして,令和元年度版の新算定表(標準算定方式・算定表)も公開されています。
これまでの旧算定表(標準的な養育費・婚姻費用の額を簡易迅速に算定するための標準算定方式・算定表)の考えを踏まえつつ,より社会の実態を反映させるために刷新されています。
例外はありますが,新算定表に基づく場合の方が旧算定表に基づく計算と比べ,月々の養育費の額の方が高額となっています。
どの表も,縦軸は養育費又は婚姻費用を支払う側(義務者)の年収,横軸は支払いを受ける側(権利者:未成年の子がいる場合には,子を引き取って育てている親)の年収を示しています。
給与所得者か自営業者かによっても軸が分かれていて,縦軸の左欄と横軸の下欄の年収は,給与所得者の年収を,縦軸の右欄と横軸の上欄の年収は,自営業者の年収を示しています。
まずは,お子さんの人数や年齢に合わせた表をピックアップします。
次に,表の中で双方の年収をたどっていき,表中でクロスするところが月々の養育費額の目安となります。
表の読み方については,上記の裁判所ホームページ内でも詳しく掲載されています。
(ステップ1)まずは,双方の年収を確認します。
お手元に源泉徴収票又は確定申告書の控えを用意してください。
年収の求め方としては,給与所得者か自営業者かで異なります。縦軸も横軸も年収の考え方は同じです。
簡単に申しますと,各種控除がなされる前の総収入をベースに考えます。
(1)給与所得者の場合
源泉徴収票の「支払金額」(控除されていない金額)が年収に当たります。
他に確定申告していない「収入」がある場合は,その収入額も加算して給与所得として計算します。
源泉徴収票がお手元にないケースで,毎月の給与明細書により計算する場合には,歩合給だと変動もあるでしょうし,賞与なども含まれていないかと思います。
必ずしも明細書の1か月分を単純に12か月分にすればよいわけではないので,その点はご注意ください。
(2)自営業者の場合
確定申告書中,右上に記載される「税金の計算」欄にある「課税される所得金額」を年収として考えます。
ただし,この「課税される所得金額」がそのまま“年収”になるのではありません。
この額は,税法上の控除がされた結果であり,実際に支出されていない費用(例えば,基礎控除,配偶者控除,青色申告控除,支払いがされていない専従者給与など)を加算して年収を考える扱いとなっています。
(3)児童扶養手当等について
児童扶養手当や児童手当はあくまでお子さんのための社会保障給付ですから,実際に金額が入るからといって,権利者の年収に含める必要はありません。
この点はご夫婦の間で話が出ることもあるかと思いますので,ご留意ください。
(ステップ2)算定表のうち,どの表を使うか選んで計算しましょう。
お子さんの人数と年齢によって,算出に使用する表を選択します。
選んだ表の中で,給与所得者か自営業者かの区別に従って,縦軸及び横軸とも確認していきます。
まず,縦軸で義務者の年収額を探し,そこから右方向に線をのばし,横軸で権利者の年収額を探して上に線をのばします。
この2つの線が交差するエリアの金額が,義務者が負担すべき養育費の標準的な月額を示しています。
例として,3歳のお子さんがお一人いらっしゃるご夫婦で,義務者(支払う側)の年収が300万円,権利者(支払を受ける側)の年収が50万円の場合を考えます。
先ほどのお子さん1人の場合の算定表(子0~14歳)を基に計算しますと,縦軸の「300」を横に伸ばした線と横軸の「50」を上に伸ばした線が交差するのは「2ないし4万円」のエリア内となります。
このエリア内が月々の養育費の目安額となります。
なお,交差するポイントはエリアの上の方にありますので,4万円に近い額で調整することになると考えられます。
これについても,よくテーマとして挙がります。
養育費とは,具体的には未成熟子(経済的・社会的に自立していない子)の監護,教育にかかる費用で,衣食住にかかる費用,教育費,医療費などの一切をいいます。
必ずしも「未成年者」が対象となっているわけではありません。
最近は大学に通うお子さんも多く,大学を卒業する年齢を目安として22歳まで取り決める場合もあります。
なお,成年年齢が20歳から18歳に引き下げる改正民法が令和4年4月1日から施行されますが,これに関し,ホームページ上でも公開されている家庭裁判所の平成30年度司法研究概要においては,次のように報告されています(2020年7月時点掲載)。
要するに,成年年齢が18歳に改正されたからといって,このことだけで,すでに決まっている終期(成年年齢が20歳と想定された上で決まっているものなど)が覆されるわけではないという内容になっています。
今回は,養育費の算定表について,計算に必要となる要素や具体的な計算方法についてお話ししました。
実際に養育費を決めていくにあたっては,この算定表も一つの目安となります。
現実的には双方の収入と実生活に基づいて決めていく必要があるため,悩ましい部分もあるかと思います。
また,正直読みづらい表になっているかと思いますので,どういう資料を集めて,どのように金額を考えていけばよいのかについても,お気軽にご相談ください。
協議離婚に関するお悩みのご相談は,オンラインでも受付中です。
次回は,話し合いの際,この養育費算定表を必ず使う必要があるのか,どんな風に話し合っていけば持続可能な養育費計画となるのか,というテーマで書いていきたいと思います。
最後まで,ご覧いただき,ありがとうございました。